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たかしの読書日記

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2008-03-31

遺書-5人の若者が残した最期の言葉/verb

カテゴリー: 日記
5つの遺書から始まる5つの物語。全員が例外なく優しく、正直で、正義感に溢れている。そして、真面目だ。その誠実さ故の悲しい結末。

彼らに強さは求めない。十分過ぎるほど強い。ただ、もう少しだけ、自分の死後の家族、友人の悲しみに対する想像力と、現状から逃げる「勇気」を持って欲しかった。逃げる事は弱さ故ではない。現実逃避しても良いではないか。人生は長い。いつでも取り返しがきく。その柔軟性を持って欲しかった。強さ故の現実逃避は奨励すべきだ。

現実とは何故こんなにも苦しいのかと、思い悩んでいる方には是非読んで頂きたい。ただ、もう少し、取材班が突っ込んだ取材をして欲しかった。分量が倍になっても良い。いや、ご家族の心境を考えると、これが限界か。
2008-03-30

哲学/島田紳助、松本人志

カテゴリー: 日記
面白半分で最初手にしたが、すぐに引き込まれた。彼らの笑いに対する真摯な態度に驚かされる。人を喜ばせたり、泣かせたり、寂しくさせたり、怒らせたりというのは簡単だが、笑わせるという事は難しいのだと気付かされた。笑いとは、それほど、誤魔化せない、自然な、それゆえに、奥の深い感情形態なのだ。二人の自他ともに認めあう天才同士の人生観、価値観の対比が面白い。私は自分で天才だと言う人を信じないことにしているが、この二人はどうやら笑いに関しては本当の天才のようだ。
そうして、才能と言う事、プロフェッショナルであることに対する、自分に対して、また他人に対しての、厳しい目が痛い程に鋭い。
2008-03-28

九月の四分の一/大崎善生

カテゴリー: 日記
「聖の青春」を読んで、興味を持った本。ノンフィクションも素晴らしいが、フィクションも良い。「報われざるエリシオのために」は、僕の趣味には合わないが、残りの3篇はなかなか良い。単なる恋愛小説に終わっていないところが素晴らしい。個人的には、僕自身実際に行ったことのあるブリュッセルの華麗なグランパレスが描かれている、九月の四分の一が、風景が目に浮かんでくるようで思いれが深い。

フィクションであるが、大崎氏の経歴から考えると、ノンフィクションの部分が大半ではないかと想像する。大崎氏の人生の苦悩の断片がうかがえるようだ。
2008-03-27

リアル(1), (2), (3), (4)/井上雄彦

カテゴリー: 日記
感涙物。必読の書。漫画と侮る無かれ。車椅子バスケットボールをテーマとして描かれるストーリー。時系列的に書かれておらず、主人公も一人に定まっていない。そこが良い。

印象的なシーンは数え上げればきりが無いが、強いて一つあげるとすれば、一巻で、戸川の車椅子を指し、野宮の、「これは、こいつの才能だ。」というセリフがある。これは凄い。才能は英語では talent, ability, gift と言うが、私は gift が一番好きである。神様からの贈り物、それが才能。だからこそ、外国では才能をもった者は尊敬され、日本のように妬まれ、出る杭が打たれることはない。

戸川に与えられた試練は神からの贈り物だ。その象徴が車椅子。そして、それは彼の神からの贈り物、「才能」なのだ。

泣けるストーリー満載。唯一の欠点は続きを読むのに1年間待たなければならぬ事。とても待ちきれない。

障害者スポーツの意味を考えさせられる。また、くどいようだが、障害者は英語で、disabled person もしくは handicapped。どちらも、適格ではない。disabled はむしろ使うべきではない。どちらかと言えば handicapped か。でもそれを言えば、すべての人間はなんらかの意味で handicapped だ。完璧な人間など存在しない。

とにかく、理屈抜きで良い。

こんな漫画が増えて欲しい。
2008-03-26

遺言-桶川ストーカー殺人事件の深層/清水潔

カテゴリー: 日記
この本は、読者の為に書かれた本ではない。今も何処かでせせら笑っている誰かへの著者のメッセージだ。警察上層部とストーカーとの癒着も暗示しており、たぶん彼らへのメッセージだ。しかも、我々にはわからないが、当事者にはわかるような形でヒントが隠されており、自分はここまで知っているんだ、覚悟しておけ、との憤りを読み取る事が出来る。

最初はストーカー被害の凄惨さがテーマかと思い読み始めたが、そうではなかった。この事件のような人格障害者はどこに居てもおかしくない。そういう人と関わった時に、警察がどういう対処をしたか?それが公になった時に、どのように隠蔽工作、蜥蜴の尻尾切りをしたか?が問題なのだ。しかも、現在警察当局は、またもや、被害者を傷つける行動に出ている。呆れて物も言えない。ストーカー被害だけでなく、警察の暗部まで暴かれて、初めて被害者とその家族が報われる日が来る。日本はアメリカと同じく自分の身は自分で守らなくてはなくてはならない時代に入ったと認識させられる。

この事件をきっかけにストーカー被害に関する法律が、異例とも言える迅速さで成立したことが唯一の救いだ。しかし、これにも裏があると考えるのは深読みのし過ぎだろうか?
2008-03-25

終わりなき日常を生きろ-オウム完全克服マニュアル/宮台真司

カテゴリー: 日記
オウム真理教、援助交際、キレる子供等の社会現象を「終わりなき日常」と「さまよえる良心」とをキーワードに、社会学的に解明し、明快な説明がなされている。この本が執筆されて以降の日本の社会状況を顧みると、宮台氏の正しさが証明されている事は、悲しいが驚くべき事実だ。(保守的な人には宮台氏の結論は受け入れ難いかもしれないが、それとは関係なく、客観的に見て。)

上に挙げたキーワードも重要だが、別の読み方として、「逆説」と「倫理と道徳」が別のキーワード足りうると思う。逆説(paradox)とは3種類あって、
(1)本当のような嘘の話
(2)嘘のような本当の話
(3)本当か嘘か論理的に決定できない話
の3つがあるが、ここでは(2)の意味である。
「良い女子高生であるがゆえに援助交際をする。」や「良心的人物が、その良心ゆえにサリンを撒く。」など。
また倫理と道徳にはちゃんとした定義があり、明らかに異なる概念である事を、恥ずかしながらこの本で初めて知った。日本にはそもそも未だかつて倫理は存在したことはなく、かつてあったのは道徳だけだと。そして、現在、その道徳がもはや崩壊したと。

現状分析は素晴らしく明快だが、それを解決する方法が具体的でないことが残念だ。ぜひともリアルタイムで読みたかったと残念でならない。
2008-03-23

恋文/連城三紀彦

カテゴリー: 日記
この本、読むの怖かった。一年ほど前、実家から家に帰ってきている電車の中で初めて読んだ。電車の中にも関わらず、涙を流してしまった。「私の叔父さん」で。他のも良いが、これは絶品。もう一度読みたいと思って手にしたが、あの時と同じ感受性を持っているのか、不安だった。「ピエロ」まで読んで、一日おいた。そして、一気に読んだ。結局、感動はしたが、涙は流さなかった。一年でこうも変わるのだろうか。感受性の衰えを突き付けられたようで、複雑な読後感だった。優しさは感受性と想像力から生まれる。僕はこの一年で大切なものを失った気がする。

ちなみに、直木賞受賞作。
2008-03-22

プリンストン高等研究所物語/ジョン・L・カスティ

カテゴリー: 日記
主役は20世紀の知の巨人たちの二人、ゲーデルとフォンノイマン。計算機をプリンストン高等研究所に作る為の教授会におけるフォンノイマンのプレゼンテーションは圧巻。しかし、科学の限界をゲーデルの不確定性定理と結びつけるとは素晴らしい着眼点だ。

確かに、科学を数学的にフォーミュレートすると、証明出来ない命題を作ることが出来る。それは、どの様な言語、表現手段を使っても避けることの出来ない命題だ。確かに古典力学も量子力学も相対性理論も客観的観測者が外にいる理論だ。観測者を含む包括的理論が出来たとしたらすぐさま矛盾を生じさせるような命題を作ることが出来るだろう。

人間の自然に対する理解能力には限界があるのか?
2008-03-21

対岸の彼女/角田光代

カテゴリー: 日記
さすがは、直木賞受賞作。いわゆる、勝ち組と負け組の「対岸」に位置する二人の物語が過去から現在に向けて交差する。書き方が上手い。葵の過去が語られているのに対して、小夜子の過去が描かれていない点が少し不満。

良い意味で女性にしか書けない小説だと思う。しかし、本当に対岸なのだろうか?女性には出産という年齢に縛られる制約がある点が男性と違うのだが、constrastという意味での対岸ではないと思う。むろん、hostilityという意味でもない。勝ち組、負け組も短絡的、近視的見方でしかないと思う。

commercialな意味でのフレーズとしては不愉快とまではいかないが、適切ではないけれも、インパクトは見ろめる。自分自身のアイデンティティを何かのグループに帰属することにより得ようとする人には良いかもしれない。人生、勝ち負けじゃなくて、自己実現だよっていうメッセージを込めて欲しかった。
2008-03-20

青春漂流/立花隆

カテゴリー: 日記
良い。まずは、前書きと後書きを読んで欲しい。これだけでも一読の価値はある。青春とは、今が青春だなと感じるものではなく、後になって、今から思い返せばあの時が青春だったんだなと回顧するものだとの主張は説得力がある。また、青春には挫折と戸惑いの連続であり、ある意味、人生における空白の時代だとは面白い見方である。しかも、その後のステップとしての準備段階なのである。

取り上げられている人物は、いずれも挫折を味わい、そこから自らの力と負けん気の強さ、好奇心で頂点に上り詰める。しかも全員が若い。既成の出世街道からは外れた生き方をし、自分のしたいことを見付けそれに遭遇することによって一つの頂きに到達する。

自らの意思も重要であるが、人との出会い、偶然が人生を左右することも面白い。

もう少し各人物像を掘り下げて分量を倍ほどにしても良かったのではないかと思うほどである。

20歳前の方には必読の書。
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