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ともだち塾の文芸日記

 
2009-03-23

カテゴリー: 日記
  手   八木 重吉
電気が消えた
お手手ないない
お手手ないないって
もも子がむちゅうで両手をふりだした
死んじまうようなきがしたんだ
手がないとおもったんだ


 八木重吉は、1898年生まれで1927年に30才という若さでなくなった詩人。
 八木重吉の娘の名前が、桃子だ。
 キリスト教徒でもある八木は、心の内面を深く見つめた詩を、数多く書いている。

 八木の詩は、ことばもやさしく、表現方法もやさしく、子どもにわかりやすいように思われるが、詩の内容は、深く思案的で、むしろ大人むきだと思う。

 八木の詩のやさしさに、心を癒されるのだろうか、おおくのファンがいる。
 八木の詩の、やさしさとともに深い思案的な部分に、魅力を感じるのだろう。
 やさしさのなかにほのかに感じる悲しみ、それも八木の詩の魅力だろう。

 八木の詩を、もう一つ紹介しよう。
 わが子の「いのち」、わが子が存在することへの深い慈しみを、読みかえすたびに感じる。


  春   八木 重吉
ほんとによく晴れた朝だ
桃子は窓をあけて首をだし
桃ちゃん いい子 いい子うよ
桃ちゃん いい子 いい子うよって歌っている


 「手」にしても「春」にしても、なんとやさしい詩の世界だろうか。
 日常生活のありふれた光景を、スケッチ風に描いているのだが、この詩人の描き出したものは、かぎりないやさしさと、かすかな悲しみだ。

 ことばもやさしく、情景もやさしい世界なので、子どもにもすぐ読み取れそうな詩だが、この詩の世界の意味するものを感じとり、意味を読み取るのは、子どもには無理だろう。
 でも、この詩のやさしさは、きっと子どもにも、伝わると思う。