あなたが好き 立原 えりか あなたが好き 生きてるから好き 笑ってるから好き くすぐったがりやだから好き くいしんぼうだから好き ねごと言うから好き わがままだから好き わたしより大きいから好き うそがへただから好き つめがきれいだから好き いっしょうけんめいだから好き 愛してくれるから好き 愛してるから好き 立原えりかは、1937年生れで、「木馬がのった白い船」「でかでか人とちびちび人」など、ファンタジー作品を数多く書いている童話作家だ。 「あなたが好き」は、黒木瞳の「真心」と、好対照の詩だ。 作品と作品が、対比している。 文芸作品を読むとき、同じテーマの作品同じ題材の作品と読むばあいが多いのだが、対比的な作品を読むのも一つの方法である。 とくに詩のばあい、「真心」と「あなたが好き」のように対比的な作品を読むと、それぞれの作品が照らし合って、それぞれの作品を別の機会に読んだときよりもおもしろさが増す。 小説などの長い文芸作品では、読み比べるのは大変だが、詩は短いので、読み比べるのに適している。 2つの作品を読み比べるだけでなく、3つ4つ5つと、読み比べるのも楽しい。 さて、「あなたが好き」。 わかったわかった、もういいもういい、「あなたが好き」なんでしょうわかったよと言いたくなるぼど、手放しで無邪気に「あなたが好き」と言っている。 「・・・だから好き」ということのなかには、それが理由で嫌いという人もいるだろう。 たとえば、わがままやくいしんぼうなどは。 でもこの詩は、「好きなのだから・・・でもいい」のではないのだ。 もうなんでもいいのである。思いついたことばを並べ、それに「好き」をくっつけただけなのだ。 恋をしたとき、「真心」のように自分のこころを見つめることと、「あなたが好き」のように相手に伝えることの、二つのタイプがある。 これは、人によって違うばあいもあれば、一人のひとが両方の行動をとることもあるだろう。 これは、対比なのだ。そして同時に、類比でもある。 自分のこころを見つめることと、無邪気に相手に伝えることが対比しているし、恋する思いというのは、どちらにも類比しているのである。 |