|  今まで生きてきたなかで、一番幸せだった頃はいつだろう? と、問うと“今”と答える自分がいる。
 
 辛く時苦しい時を経てこなかったら、この答はなかったに違いない。
 逃げたいときに逃げずにたから…
 死にたいと思った時に死ななかったから…
 
 今がある。
 
 何も考えずに自宅から見た今朝の朝焼けは、刻々と町の色を変えた。一瞬たりと変化を止めることがない。
 私の幸せへの思いも常に変化しているに違いない。
 新たな幸せを感じるために、新たな苦痛を経験することが必要なのだろうか?
 そう考えた途端に、町を赤く染めた朝日は、私の眼前から一瞬にして消えうせた。
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